「さっ、坂本ーーーーー!!」
突然の叫び声で、体育館の中にざわめきが起こります。
どうやらトラブルが起こったのはネットを挟んだ向こう側。バスケットボールをやっていた男子の方です。
先生が男子に囲まれた輪の中を割って入っていきます。その時、床に大の字で倒れ込む坂本くんの姿が隙間から見えました。その付近にはバスケットボールが転がっています。
……何故でしょう。嫌な予感が。
「どうしたんだ、坂本は!?」
「よそ見してて顔面にボール食らいました」
「おい、立てるか?」
「だ、大丈夫……です」
「ああ、頬が赤いな。一旦保健室行ったほうがいい」
ビクッと肩が震えます。
私はそそくさとその場を後にしようとしますが、早川さんの腕に阻まれます。
早川さんのしたり顔を見た瞬間、確信しました。
「保健委員はいるか? 坂本を連れてってやれ」
「はーい! 保健委員、ここでーす!」
勝手に私の腕を持ち上げて、早川さんがひらひら振ります。何食わぬ顔で、です。
完全にハメられました。早川さんに。



