私は昔から、自分の感情を言葉にすることが苦手でした。
思えば、私はいつも大事なところで言葉を間違えていた気がします。
そうして、自分の本当に伝えたかった言葉を違え、私の言葉によって相手の傷ついた顔をするたびにとてつもない後悔が押し寄せるのです。
そう、私は、意気地なしだったのです。
意気地がないから、人と関わることを恐れて、ひとりの世界に閉じ籠っていたのです。
たったひとりで完結した世界を──、彼が優しく解きほぐして、連れ出してくれた。
だから、もう、間違えたくない。
私は、私だけの言葉で、彼に伝えたい。
……私は、坂本くんが。坂本くんのことが。
「──好きです」
彼の目を見て、はっきりと告げました。
坂本くんの口から、「……ぇ?」と小さな声が漏れ出ました。
ひょっとして聞こえなかったかと思い、私は一歩、彼の元へ踏み出して言います。
「好きです」
「え……え、えぇ……?」
ぐるぐる目を回して、混乱している坂本くんに、私はさらに近づきます。
「坂本くんが、好きです」
じっと彼の目を見て、もう一度。
「な、なっ……〜〜〜〜!!!!」
顔から蒸気が噴き出るんじゃないかと思うくらい、首まで真っ赤にした坂本くんが、ヘロヘロとしゃがみ込みます。両手で顔を覆って、丸くなってしまいました。
私も彼の目線に合わせて、座りました。
彼は丸くなったダンゴムシのように、全く顔も見せてくれません。けれども、彼の首筋は夜の暗がりでも分かるくらいに赤く染まっていました。



