水槽から差し込む光の筋は、水面で揺れる光の模様に合わせて、空より濃い青一色の床を彩る。
夏休み最終日だからか、人の入りはまずまずだ。おかげで順路を進む人の流れは緩やかで、俺たちは、ひとつひとつの水槽をゆっくり眺めることができた。
曲線を描く長い長い水槽の中で、水の中を、まるで空を飛ぶように優雅に泳ぐエイを見つけた。水槽の側面を沿うようにして泳ぐエイの腹が見えた。
思いの外、つぶらな顔に見えて、ちょっとツボる。
「なあなあ、見て。ちょっと、可愛くない?」
「?」
隣で見上げていた倉橋さんが首を傾げる。
この人混みやから、たぶん、声が届かなかったみたいだ。
俺は彼女の耳元に顔を寄せて、エイの方向を指差した。
「見て? 可愛い、」
よ、と最後まで言い切る前に、倉橋さんが勢いよくのけぞった。右耳を押さえて、信じられないものを見るような目でこっちを見ている。
知らん人に頭撫でられて警戒する猫みたいな反応に、内心、めちゃくちゃ傷ついた。
「あ、ご、ごめんな。驚かせた?」
「いえ。別に」
倉橋さんは、硬い口調で首を横に振ると、背を向けて歩き出した。
さっきからずっと、倉橋さんの横顔が後ろ姿しか見てない気がする。



