電車を乗り継いで、約1時間。
改札を出て、一歩外に踏み出すと、潮風が頬を撫でた。数羽のカモメが空高く飛び、出航する漁船の汽笛が鳴る。
しばらく海岸沿いを歩くとボート乗り場から、向こう岸を繋ぐ桟橋を通ると、目的地はすぐそこだ。
“臨海水族館”と書かれた大きなアーチの前で、カップルや家族連れが、和気藹々と写真撮影をしている。
人の流れに沿って、入場列に並ぶと、俺は後ろを振り返った。
「水族館なんて久しぶりや。小学生の遠足以来? 倉橋さんは?」
遠目に周りの風景を見ていた倉橋さんが、ぴくりと肩を跳ねさせた。彼女が何を眺めていたのか気になって視線を辿る──、が、直前で倉橋さんの咳払いがそれを遮る。
「私も久しぶりです」
「じゃあ、いっぱい回ろ! イルカショーと、ペンギンショーと、あ、イワシショーっていうのもあるんやって! あっ、でも、クラゲの展示エリアも捨てがたい」
「坂本くん、小学生みたい」
くす、と小鳥が囀るみたいに倉橋さんが笑う。
「……しゃあないやん。めちゃくちゃ楽しみにしてたんやもん」
口を尖らせて、言い返す。
すると、倉橋さんは、ぴたりと動きを止めた。
「倉橋さん?」
腰を曲げて倉橋さんの顔を覗き込もうとすると、倉橋さんの顔が俺とは逆方向に向く。
……あれ?
なんかいま……避けられた?
前に並んだ人たちが進み出し、倉橋さんがその後に続く。そして、半テンポ遅れて、置いてけぼりにされ俺をの方を振り返る。
「ほら、行きますよ」
ちょっとそっけない口調で、そう言った。



