「ホンマは、どっかで分かってたんや。俺に黙ってたのは、お前の優しさやって。……それを分かってて、分かった上で、俺はお前に怒りをぶつけた。誰かのせいにしたほうが、楽やったから。俺は楽な方を選んだ。俺の心が、弱かったから」
「……違う! 朝日はなんも悪くない! 俺が! 俺が怖かったからや! 親友でおられんくなるのが怖かったら、言えんかった! 俺がただの意気地なしやっただけや!」
何度も自分の胸をたたいて、声を上げた。
しかし、朝日は決して縦には頷かなかった。
「……高校入ってから、監督に言われたんや。あの件で俺のスポーツ推薦を取り消しって話が上がった時、直談判しにきた奴がいたって」
「……」
「そいつは、朝日はなんも悪くない、絶対いい選手になる、入学させんかったら絶対後悔する、あいつから野球奪わんといてくれ、ってその場にいた大人全員が折れるまで、頭下げ続けたって」
朝日の声は、震えていた。
「そん時、監督に言われたんや。ええ友達持ったなって」
朝日の足元に水滴が落ちて、黒いシミが出来ていく。
「……俺はそんなええ友達を、傷つけた。意気地なしは、俺のほうや」
顔を上げた朝日の瞳には、大粒の涙がボロボロ零れ落ちる。強い意志のこもった、まっすぐな瞳だった。
「ホンマにごめん」
ああ、そうだった。思い出した。
朝日は、こういう奴だった。
真っ直ぐで、単純で、情に厚い奴だった。
目を合わせることが怖くて、ずっと逃げてたから、そんなことさえ忘れてしまっていた。
「こんなん虫のいい話やって、分かってるけど……! 侑に見合うええ奴になるって、約束する。だから、」
ありったけの勇気を絞りだしたような声で、朝日は俺に言った。
「だから、また俺と……友達になってくれんか?」
視界が滲む。でも、なんとか堪えて俺は応えた。
「……馬鹿やなぁ」
過去のしがらみが全て洗い流され──今、俺の目の前に立つ、彼の目を見据える。
「お前と友達じゃなかったことなんてない。今も昔も──朝日は、俺の親友やろ?」
朝日は顔をぐしゃぐしゃにして、何度も頷き、豪快に笑った。
「当たり前や、ボケ!」



