隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。

 
 「……向こうでは野球、やってんのか?」
 「やってへん。そもそも野球部ないしな」
 「……そうか」

 沈黙の中、コツン、とバットが地面に降ろされた音がする。

 「侑、」
 「?」

 改まった硬い口調に違和感を感じて、視線をやると──朝日のつむじが見えた。深々と俺に向かって頭を下げた朝日が、俺より先に口を開く。

 「ホンマに、ごめん」

 掛ける言葉が見つからなくて、開きかけた口をつぐんだ。

 「ずっと、考えてた。お前がいなくなってから。お前が、あん時……どんな気持ちでいたか」
 「……」
 「……しんどかったやろ。誰にも言えんくて」

 不意に、熱いものが喉奥から迫り上がってきた。思わず顔を逸らして俯いた。

 「最悪なんは、俺の方やった。お前の言葉もなんも聞かんと、一方的に殴って……言ったらあかんことまで口走ってしもた」

 やめてくれ、と心が叫ぶ。
 噛み締めた唇から血が滲んで、口の中に鉄の味が広がる。