隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 パカーン! と景気のいい音が聞こえる。

 バットの芯をとらえて打ち返されたボールは、真正面のネット目掛けて一直線に飛んでいく。

 隣のボックスに立った朝日が、どうだ、とでも言いたげに顎を上げた。

 「どうや、俺のバッティングは」
 「はいはい、すごいすごい」

 適当にあしらいながら、ピッチングマシーンから放たれたボールに合わせてバットを振る──が、若干上振れたせいでガキン、と間抜けな音を立て、ボールはすぐに落下してしまった。

 すると、再び隣ボックスからヤジが飛んでくる。

 「力みすぎや。西ノ宮中の4番が聞いて呆れるで」
 「……さっきからベラベラうっさいねん。舌噛んで、また病院送りになりたくなかったら黙っとき」
 「はぁ〜〜〜!? 知らんのか、バッティング中の負傷は名誉の勲章やねん!」
 「どんな理屈や」

 中学の頃、口喧嘩をしながら、バッティング練習をしていたことを思い出す。

 散々部活でしごかれたというのに、野球バカの朝日は嫌がる俺の首っこ掴んで、意気揚々とバッティングセンターに引きずり込んでくるような奴だった。

 小学生の頃、地元の野球チームに入って、朝日に出会ってから、毎日喧嘩ばかりしていた気がする。

 喧嘩の内容は大体しょうもないことで、やれ俺の方が打率が高いだ、俺の方が足が速いだ、俺の方が身長が高いだ、そんなくだらないことばかり。

 喧嘩した日は、一言も喋らず朝日と別れて、家に着いて風呂入って寝て、翌日顔を合わせたら喧嘩した内容なんてケロっと忘れて、くだらない馬鹿話で笑い合った。 

 単純だったあの頃が、懐かしい。
 今はもう、どうやって朝日の目を見て話せていたのかすら、思い出せない。