隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 「それから、」
 「……(まだあるのか……)」
 「白波瀬くんと随分仲がいいんやね。知らんかったな〜倉橋さんに婚約者がいたなんて」
 「それは誤解です。……というか、その件については、いた……、白波瀬くんからも否定したと聞きました」
 「えー? 誤解って何? でも、アイツん家には行くような仲なんやろ? 折りたたみ傘、白波瀬くんちに忘れて届けてもらってたやん」
 「……なっ、何でそれを!」

 思わず坂本くんの方を振り返ってしまいました。
 久しぶりに坂本くんと目が合います。

 坂本くんのジトーっとした視線が、罪悪感をさらに煽ります。
 浮気を問い詰められる人って、こんな気分なのでしょうか。変な汗が止まりません。

 「そ、それは……白波瀬くんのおじいさんちで神楽の稽古した時に、たまたま……傘と違うものを取り違えて、持って帰ってしまったからで」
 「ふ〜〜〜ん? へ〜〜〜そおなんや〜〜〜」
 「何ですかその反応」
 「べっつに〜〜?」

 納得してません、ともう顔に書いてあります。

 「ちなみに聞くけど、何と間違えたん?」
 「……」
 「何と間違えたん?」

 言葉の端々に圧を感じます。
 苦渋の選択を迫られ、私は恥を忍んで答えました。

 「………………にんじん」
 「……フ」
 「今笑いましたか?」
 「……笑ってへん」
 「というか、坂本くんも心当たりあるでしょう」
 「?」
 「~~~! しらばっくれないでください! 転校してきてすぐ、私がコンビニ前でお腹抱えて笑ってたところ見てたでしょう! あれです!」
 「……あっ、あ~〜〜あれかぁ! ずっと傘持ってると思ってたのに、よおみたらにんじん握ってて爆笑しとったん!?」
 「皆まで言わなくていいです!!!」

 ようやく合点がいったのか、坂本くんが景気良くポンと手を叩きます。

 ああ、もう!
 だから言いたく無かったのです。
 何で私、過去の恥部を曝け出さされているんでしょうか。恥です。