「そういえば、つい最近、神原さんから気になることを聞いたんです」
「気になる事?」
「はい。どうもここ4年ほど、自治会費の支出が合わなくて困っている、とか。なんでも、婦人会の経費の中で、不透明な項目がいくつかあって、年々その費用が膨らんでいるんだとか。婦人会に問合せてものらりくらりとかわされて、まともに取り合ってもらえないと嘆いてましたよ」
にっこりと、人好きのする笑みを浮かべて、首を傾けました。
「……そういえば、井上さんが婦人会の会長になられたのも4年前からでしたね」
井上さんを含む3人の顔色がさっと引いていきます。
「俺も一応白波瀬家の端くれなので、この件については祖父に報告すべきかと悩んでいたところなんです」
「……」
「ああ、失礼しました。こんな話、それこそ神様の御前で話すようなことではありませんね」
「……」
「この話については、祭りが終わった後にでも。どちらが相応しくなかったのか、話し合えば分かるでしょうから」
顔面蒼白の死人のような顔で3人ほど、宿舎から出てきました。
一歩遅れて、その場を立ち去ろうとしたけれども、遅かったようです。
私の顔を見るなり、ギョッと目を見開いて、蜘蛛の子を散らすように逃げ帰っていきました。ええ……私は何もしていないのに……。
続けて、白波瀬くんがドアから顔をのぞかせます。
私を探すように視線をうろうろさせて、思いの外そばにいた私を見つけて、少し目を見開いた後、溜息を吐きました。視線が私の手にしていたヘッドフォンに向きます。
彼の言わんとする事は、分かった上で知らないふりをして、彼からの預かり物を手渡します。
「……入れば?」
「……うん」
お尻の砂埃を払い、彼に続いて宿舎の中へ入りました。



