良く思われていないことは、知っていました。
特にご年配の方々は、私のような”余所者の血”が流れていることが気に食わないのだということも。
自治会の反対意見を白波瀬くんのおじいちゃんがねじ伏せたことも、さらに輪をかけて不満が溜まったのでしょう。
というか、今耳にしなかったことの方が不自然です。白波瀬家の御当主自ら、箝口令を敷いたと考える方が妥当です。
……正直、どうでもいいです。
血筋とか、昔のしきたりとか。
聞くに耐えない祖父への侮辱も、根も葉もない噂を垂れ流す言葉も、言わせておけばいい。
耳を塞いで、目を閉じて、事を荒立てぬようただじっと息を殺せば、世界は丸く収まるのですから。
「──倉橋?」
聞き慣れた低い声に、私は顔を上げます。
こういう時、一番顔を合わせなくない人が来てしまうのが、神様の悪戯というのでしょうか。
耳につけたヘッドフォンを外して、白波瀬くんは訝しげに私を見下げます。
「……中入んないの?」
「あー……」
なんと言うべきか、頭の中で言葉を選んでいる間に、宿舎からの話し声が私たちの会話を遮ります。
「愛想もない可愛げもない子、さすが余所者の子って感じよね」
……あ。まずい。
彼に会話を聞かれた事以上に、彼の表情を見て私はそう思いました。



