今思うと、昔の私は結構単純でした。
薄っすら恋心を抱いていた男の子に"つまんない女"だと言い捨てられて、子供心にかなりショックを受けたものです。
学校の帰り道、散々泣いたのにも関わらずまた涙が止まらなくなって、このまま家に帰ったらお母さんが心配すると思った私は、おじいちゃんがやっている書道教室に駆け込みました。
おじいちゃんの甚平をべちょべちょに濡らしながら、わんわん声を泣いて。
「侑子、そんな泣いたら、侑子の綺麗なお目目が溶けてしまうで」
「……っ、ぐす。溶けないし」
「言い返す気力が出てきたんなら上々や。許してやる気になったら、また将棋クラブ行ったり」
「…………、いいよ。至くんなんて、もう嫌い。会いたくない」
「……」
おじいちゃんは、何故だか口をすぼませて苦虫を嚙み潰したような顔をしました。



