隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 蛍光灯の明かりで照らされた、ちゃちなキーホルダーをじっと眺める。箱のパッケージを被った不細工で可愛くないキーホルダーだ。

 おまけにダブったからと雑に押し付けられた、余り物。

 こんなものを大切に肌身離さず持ち歩く俺は、相当に焼きが回っている。

 初めは罪悪感だった。
 倉橋のじいさんと交わした約束を守るため。

 祭りが終われば、彼女とは二度と関わらないと決めた。俺の顔なんて、見たくないだろうから。

 決めた。
 決めた、はずだった。

 坂本侑が現れてから、俺はおかしくなってしまった。

 あいつの隣で、かつて、俺にだけ見せてくれた笑顔を浮かべる彼女を見るたびに、心臓が軋むような音がした。

 罪悪感だけでは説明のつかない制御不能な感情がなんなのかは、もう、見当がついていた。

 俺はキーホルダーを手のひらに優しく握り、息を吐く。

 『あいつは手強いで〜。ハッキリ言わんとなんも伝わらんから覚悟しとき』

 かつて倉橋のじいさんに言われた言葉が今になって、さらに現実味を帯びて俺に襲いかかってくる。

 ……認めたくはない。
 認めたくはないけど、今、俺は──猛烈に後悔している。

 『俺、アイツに死ぬほど嫌われてるから』

 敵に塩を送ったことを、後悔している。