納骨が終わり、参列した人たちが式場を後にする中、俺は人の隙間を縫って彼女の後ろ姿を探す。
見慣れたセーラー服が、ふらりと曲がり角へ消えていくのが見えて、俺はその後を追いかける。
俺の足音が、明かりもない薄暗い廊下に響く。
足音に気付いたのだろう彼女は、ぽつんと置かれた自販機の前で立ち止まった。彼女の右だけが頼りない電飾の光で照らされている。今にも消えて無くなってしまいそうなほど、弱々しい背中だった。
「……ユ、……倉橋」
俺の呼びかけに、彼女が振り向くことはない。
いざ彼女を目の前にすると、言葉に詰まる。
言いたいことは沢山あったはずなのに。
ああ、くそ。情けない。
俺は何年経っても、あの頃のままだ。
血が滲むほど強く拳を握り、俺は表を上げる。
「……ごめん、」
震える唇に吐いた息に触れて、情けない音を立てて漏れ出す。
勝手に視界が滲んで、ほんの数メートル先にいる彼女の姿すらぼやけてしまう。
「ごめんっ、ごめん……、俺が……」
俺がもっと、早く、助けを呼べてたら。
「……、白波瀬くんのせいじゃないよ」
蚊の鳴くような声で、彼女は言った。
僅かに振り返った彼女の瞳が、ちらりと髪の隙間から覗く。
「けど、今はひとりにして欲しい」
刹那、猛烈な後悔が押し寄せてきた。
彼女の背中が徐々に遠ざかっていく。それを呆然と眺めることしかできなかった。
今、俺はただ、許されたくて謝った。
それを聞いた倉橋がどう思うなんか、お構いなしに。
しばらくして、廊下の突き当たりにあるドアのすぐそばから、彼女の押し殺すような啜り泣きが聞こえてきた。
俺は背中を預けた壁から崩れ落ちるように、そのまま力無くしゃがみ込んだ。
……最低だ。
今一番泣きたいのは、彼女だったのに。
ユウの優しさに縋ってしまった。
どうしようもないクソ野郎だ。



