『寂しいって....なんで?』

 彼はなんでそんなことを聞いてきたんだろう。もしかすると、青山くんと私は両思いだったりするのかな.......だとしてもだ。

「なんであんな余裕なわけ...?ムカつく....」

「何がムカつくの?」

「ふぇ?!」

 顔を上げると友達が私の顔を覗き込んでいた。驚いた顔の私に友達は大笑い。何がおかしいんだが、私にはさっぱりだ。

「急に話しかけないでよ....」

「何にイライラしてたの?」

「別に......大した事じゃない」

 私がそう言うと、友達はまた笑った。

「大した事ないなら、呼んだりしたらすぐ気づくでしょ?何考えてたの〜?.....もしかして〜??」

「うるさい」

「え、当たり?!ねぇねぇ....」

 そこまで言うと友達は私の耳元に近づいてきた。すごくニヤニヤしてるし、なんか怖い。絶対なんか変な事を考えている顔だ。

「....デートとか、したの?」

「.....は」

 そう囁いた彼女はまたニヤリと笑う。なんというか、彼女には全部見透かされているのでは?と思ってしまう。

「まだだよ、まだ.....告白もしてないし」

「え、まじ?」

 彼女は『もう付き合ってんのか思ってた!!』と凄く驚いた顔をしていた。少し前にそんなウワサが流れたとき、私は否定も肯定もしなかったから恋人どうしであることがクラスの中では事実になってしまったらしい。ウワサが流れてからまだひと半月も経ってないのに、勝手に話が進んでいて、私はそれにびっくりしてるんだけど。

「向こうにも確かめなかったの?」

「えー?」

「えーじゃなくて、青山くんに確かめなかったの?」

「満更でもない顔してたよ?両思いなんだ〜って思ったから、てっきりもうゴールしてるのかと」

 思わず大声で叫びそうになった。ということはあの発言も、分かっていてやってたということなのか。

「あのばか〜っ.....」

 そう言って机に 突っ伏した私を見てケラケラ楽しそうに笑っていた。どうしよう、顔が熱い。勢いあまってバカなんて言ってしまったし、もう本当にどうしよう。

「紫乃可愛い〜.....!」

「かわいくない〜.....むり〜.....穴があったら入りたい.....」

 うんうんと唸る私を見ながら、彼女は可愛い可愛いと連呼する。楽しんでいるところ本当に申し訳ないけど、うるさい。可愛いなんて連呼する前に、私のこの状態をなんとかしてほしい。

「あっつい....ほんとにさぁ...」

「ここまで来たなら、もうやることはひとつだよね?」

 顔の赤さをなんとか落ち着けようとする私とは反対に、楽しそうに話し続ける彼女。もう完全に楽しんでる。でも、どのタイミングで言うのがいいんだろう。

「やるって言ったって....いつ?」

「えー?そりゃもう.....誘うんだよ、夏祭り」

「えぇ!!無理無理!死ぬ!」

「人はそんなに簡単に死なない。」

「無理なんだってぇ.....」

 彼女が言っている夏祭りというのが八月頭にある。今日が六月の二十五日だから、あとひと月と少し。考えるだけで顔が熱い。

「こりゃ相当好きだな?早く告白しちゃえよ」