放課後、掃除も終わっていつもなら部活に行く時間。今日は行く気になれなかったから、部活のメンバーに適当な理由を言ってサボった。部活の引退も近いのに、こんなことをしてもしブチ切れられたとしても何も言えない。だけど、それ以上に気になることがある。

「大丈夫かな....青山くん」

 速度は遅いにしても少しずつあの秘密がみんなの耳に入り始めている。それを一番気にしているのはきっと彼だから。
 ・・・と、いうのはただの口実で、本当はウワサのあれこれなしに私は彼に会いたかった。そのために部活をズル休みしたなんて言ったら、きっとからかわれるだろうけど。

「いた....」

 外に出て当たりを見回す。部活に向かう子たちとは反対方向に歩いている彼を見つけた。私は思わず声をかける。

「ねぇ、」

 私の声に気づいたのか、彼は私の方を向く。

「こんなところで何してんの、部活は?」

 少し驚いたような、そんな顔をしている。

「なんか行く気しなくて、サボっちゃった」

「なんだ不良か」
 
 不良ってなんだよ。部活サボっただけで不良になるんだったら、ピアス開けてるのはどうなるんだ。

「うるさい、じゃあ青山くんはどうなるのさ」

「なにが」

「ピアス」

「おいっ」

 彼は焦った顔をする。幸運にも私たちの他に同じ制服姿の人はいなかった。周りから見れば今の私たちは、本当に恋人同士に見えているのかもしれない。実際はまだ告白もしていないけれど、恋人同士になればこんな風に一緒に帰ったりするのも当たり前になるんだろうか。

「そういえば.....雉真って進路どうする予定なのここな普通にエスカレーターで上がるの?」

 彼が思い出したかのように聞いてくる。少しだけ、その質問をされたことに私は驚いた。きっと彼は私のことをあまり気にしていないと思っていたから。

「まだ、考え中...もしかしたらエスカレーターかも。....分かんない。青山くんはどうするの?」

「隣の市の大学」

「...そっか」

 もし大学に受かったら、離れてしまうんだ。それは前々から分かっていること。昔の私なら別になんとも思わない。だけど、今の私は違う。

「寂しくなっちゃうね」

「まぁどうなるかわかんないけど。....ってなんで?」

 しまった.....つい口が。

「寂しいって....なんで?」

「ないしょ....」

 自分で寂しいなんて言っておいて、急に顔が暑くなった。最近たくさん彼と話せるからって、調子に乗りすぎだ。よく話せるのもきっと、たまたまタイミングが合うだけで別に深い意味もないはず。....そう、きっと偶然だ。