一番星にキス。

 
 ライブまでの日々は怒濤で。

 カレンダーに印をつけてカウントダウンして。
 
 ライブの日の格好を考えに考え抜いて。
 
 爪を緑色にすることを提案してくれたのは落合さんで。


「私はあんまりこだわらないんですけど、……野宮さんはきっとこだわりたいと思うので」

「ありがとう! るみちゃん!」

「下の名前で呼ばないでって……まあ、いいか……」



 緑色のネイルシール。片手にペンライト。片手にうちわ。一緒に作ってくれた落合さんに感謝だ。

 
 ライブ会場は混んでいて、思い思いの「正装」をしたファンであふれている。
 緑色の格好の子も居る。……だけど、だいじょうぶ。

 

 私はもう大丈夫だ。
 

 辺りが暗くなって、舞台上にアイドルたちが登場する。
 私はうちわを持って、遠くに見えた私だけの一番星に手を振った。


「たける!」


 私の恋人は、アイドル――どうしようもなくアイドルに憧れた男の子だった。

 そして夢への一歩を今まさに踏み出そうとしてる。 

 私は一等星に手を伸ばす。

 
 いつか、世界中が尊のことを知るかもしれない。

 


 それでも。
 






 それでもあなたがすきだよ。

 




 私は、一番星を――貴方のことを、ずっと、ずっと待っているから。





終わり