一番星にキス。

「いちご。俺、誓うよ」

 くさむらに横たわったままの私たちは、誰にも見つからない秘密の場所で、誓う。
 
 涙で曇った目をぬぐうと、私だけの、一等星がそこにいた。



「でかいアイドルになる。……誰にも文句言わせない。そんなでかいアイドルになる。そんで……そしたら、おまえと結婚するんだ」

「けっ……」

 私は言葉を失ってしまった。

「それ以上って、そういうことじゃないの?」

 尊が笑いながらちいさく首をかしげるから、私は罪悪感でいっぱいになる。「そっち」じゃないほうだ。

「……そ、そうだけど」

 でも、うれしい。

「そうしたら、俺がアイドルだろうが、なんだろうが、俺はいちごのもの。いちごは、俺のもの。ちがう?」

「……うん」

「きまり」



 尊は私の額にやわらかくキスをして、それから私を力強く抱きしめた。

「ごめん。待たせると思う。……でも、待ってて。俺が一番星になるとこ、見てて」

「待てるよ。大丈夫。……どんな遠くからでも、応援してる」

 私は尊のくちびるにくちびるをあわせた。

 尊しか見えなかった。
 
 からだをさわって、背中をなぞって、何度も確かめた。
 
 尊の体温。尊のくちびる。におい。


「私も、いい女になって、……緑色のうちわもって、参戦するね」

「見つけたら一番にファンサする」

「それはだめ。みんなのことを見て。私はただのファンの一人に過ぎないんだから。みんなのこと、大事にして」


 私は尊の濡れた唇にさわった。

「でも、こういうのは、私だけにして」

「あたりまえだろ……」



 星空の下、一等星のない静かな秋の空の下――私たちは何度もくちびるでお互いを確かめ合った。







「落合さん!」

 学校に着くやいなや、私はA組に駆け込んだ。「落合るみさん、いる?」

「野宮さん」

 眼鏡を吹き飛ばしそうな勢いで立ち上がった落合さんは、私を凝視した。

「下の名前で呼ばないでって――!」

「落合さん、もうチケット譲っちゃった?」

「あ、」


 落合さんは握った拳を引っ込めて、それから私の手を握った。

「あります、まだ取ってあります、いつでも野宮さんがいけるように取ってありますとも……!」

「ありがとう! ……私、ロクブルのライブ行くよ! 行く! うちわも作るし、Tシャツも着る! ちゃんとファン、やってみる!」

「の、ののの、野宮さぁん! 信じてましたよ!」

 私たちは熱い抱擁(ほうよう)をかわした。


「勉強も頑張るしオタク活動も頑張る! だから、落合さん、友達になってください!」


 ざわ、と周りがざわめいた気がしたけれど、私は大真面目だった。落合さんはブルブルふるえて真っ赤になって、「よろしくおねがいします……」とつぶやいた。



「っていうか、もうとっくです……」