おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~

「ども~お久しぶりです」

 出入口でドアを鳴らします。
 それに気づいた家主である車椅子のおじ様が、奥から出てきました。

「よう、シェルディじゃねぇか。……因みに、そちらの嬢さんは?」
「マリアです。はじめまして」

 隣に並んでいた私は、シェルディさんのご贔屓さんに会釈をします。

「……なんだ、彼女か?」
「まだ友達です」
「そーかいそーかい」

 “まだ”……?
 いやいや、言葉の綾ってやつですね。

 車椅子のお客さんなので、シェルディさんはしゃがんで目線を合わせます。
 私も隣で目線を合わせると、お客さんはにっこり笑いました。

「二本でよかったよね?」
「あぁ、とりあえずな」

 シェルディさんは「はい」とワインを渡し、お代を受け取ります。

「これで今夜の晩酌が楽しくなるよ」
「ありがとうございます。オレもその為に作ってるんで」
「また頼むからね」

 シェルディさんはその一言に頷くと、立ち上がりました。


 ――その時でした。

 
 風一つない外の空気のはずなのに、ふわり、と深く被っていたシェルディさんのフードが脱げたのです。

「――!」
「っ化け物!!」

 私はその一言に、言葉を失います。
 目の前のおじ様は、先程までの優しさとは一転、有り得ないものを見るような目でこちらを指差したのです。

 いえ、正確には――シェルディさんの“耳”を見ながらでした。