父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

 私の言葉に幸星くんが右側の口角を上げて鼻から息を吐いた。
 ふざけないでくださいみたいな微笑み王子だ。

「だって紗月さん自分のこととなると聞いてよ聞いてよって前に前に出てくるんですもん」

 外科特有の自己主張の強さと自信過剰が、プライベートでも無自覚に発揮されているのね。

「隠しているんだけどな」
「あれでですか?! 本気で隠す気あります? 喋る気満々でしょ」
 そんな声を上げなくても。隠す気満々だったわよ?

「それを証拠に梨奈ちゃんは気付かなかった」

「気付かないから驚きましたよ、きょとんとしちゃって。しかし、きょとん顔も可愛かったなぁ、僕の女神梨奈子ちゃん」

 結局、着地点はそこか。

「もっと幸星くんに聞いてもらわなきゃいけない問題だと思ったけど、泣くなく別れたのに戸根院長の中では、とっくに過去のことだった」

「四季浜さん焦っちゃいましたよね。御本人の性格のまま、ゆったりかまえていたら展開は違ったかも。なんせ心に余裕がなかった」

 礼儀正しく守ってあげたくなるような可愛らしい女性だったから、私は脅威を感じた。

「四季浜さんの心に余裕があったら戸根院長の心も揺れちゃったか。焼けぼっくいに火がつくところだったわね」

「もしかしたらですね。アリスのことが心配っていうのもあったでしょうから、よけい距離が縮んでしまったかもしれませんね」

「危なかった」

「四季浜さんの空回りで済んで良かったですよ。お二方がケンカしてしまいましたが、逆にお二方の仲は深まりました、結果オーライです」

 冷静に考えて、尚且相手や周りを思いやって動けるかっていうのは仕事でも恋愛でも当てはまること。

「仲直りした日、私を独り占めしたいって。心の中に私を閉じ込めておきたいって言われたのよ」

「紗月さんって可愛いですよね、幼児みたい。本当に自己主張の塊ですよね、言いたがり屋さん」
 
 歯並びの良いきれいな笑顔で声を出して笑っている。

「なにをプレゼントしたら喜ぶかな。私、壊滅的にプレゼントセンスがないのよ」

「センス云々のことは気にしなくても良いですよ。男は欲しいものは自分で買っちゃってるし、物では正直あまり喜ばないですよ」

「でしょうね、経験上なんとなく知ってた」

「お金じゃ買えない愛がほしいんですよ」
「結局、愛って体か」