父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

「おそろまでいかないけれど、私たちのコーディネート合っていますよね」
「ん、あぁ。ま、これも良いもんだな。おい」
「へ?」
 左腕をくいくいと動かしている。腕を組もうって合図か。

「寒ぃな、手を貸せよ、ほら」
「あ」
 っという間に手を握られダウンのポケットに入れられた。

「温かい」
 照れ隠しなのか真っ直ぐ前を向いて独り言みたい。

「昨日のケンカについて、ずっと考えていたんです。私が言いすぎたから戸根院長がひとりになりたい気持ちが分かりました、ごめんなさい」

「頑固で謝れない俺に辛抱してくれてありがとう。昨日も途中で言いすぎたって言ってくれてたよな、ごめん」

「もっと戸根院長のおっしゃっていることや気持ちを聞くべきでした」
 
「俺たちは性格的に違うところもある、でも愛してることを忘れるな。伊乃里の幸せな顔が見たい」

「私も。それにさっき四季浜さんに彼女を不安にさせたくないって、はっきりおっしゃってくれました」

「伊乃里とケンカして昨日も今日も本当に哀しかったが仲直りが出来て良かった。これからも一緒に解決策を見つけていこう」

 これから先の話って大好き。ポジティブな発言に満点の笑顔で返事をした。

「寂しかったし怖かったんです。その正直な気持ちをぶつけるのは良いと自分では思います。でも醜いケンカになったのは嫌でした、ごめんなさい」 

「怖かったよな、ごめん。男性不信な伊乃里がようやく立ち直れたのに、人の倍以上かけてもっと気にかけてケアしてあげるのが俺の役目なのに」

「今、幸せですし、これからもずっとずっと幸せですから」

「あと聞きたいんだが、唯夏からもらった腕時計や万年筆や壁掛け時計は処分した方がすっきりするか?」

「戸根院長おっしゃっていたじゃないですか、もらった物に愛着があって大切にしているって。破棄したら物がかわいそうです」

「唯夏への気持ちは何年前だろう。忘れるほど前にとっくに切れていた」 
「それなら許す」
「伊乃里紗月さん、恐れ入ります」
 目と目が合って微笑み合える幸せが戻ってきた。

「大切に使ってあげてください。次からはほしいものは私に言ってくださいね」

「ほしいものか、伊乃里を独り占めしたい。俺の心の中に伊乃里を閉じ込めておきたい。心の中に閉じ込めるのは自由だろう? 今も伊乃里が俺の心を独占している」

「私も! 今回、四季浜さんが現れたときは戸根院長を私の心の中に閉じ込めておきたかったです。切実に」

「仲直りして、今幸せを噛みしめている」
「私も仲直りが出来て幸せです」

 雨降って地固まる。ケンカするほど仲が良いって言うもんね。

 不安な気持ちをぶつけられたし、戸根院長は私の不安を取り除いてくれた。

 想い合うからこそ衝突もしちゃうのは、どこのカップルも一緒かな。仲直りって良いね。