父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

「創跡が盛り上がっている、目立たない。思い当たることは?」
 室内の音という音が消されたように気配も消えて静まり返る。

「嫌なら答えなくて良い」

「気持ちの消化をしたいから言わせてください。以前、名垣院長が私の心と体に手を掛けたときにタバコの火が当たったんです」
 
 うしろから追われたときの心と体の傷。

 その後も、なにもかも吐き出したことで重苦しい胸のつかえが取れてきた気がする。

「そっか、心の傷も体の傷も痛かったよな。背中なんか見えないもんな、怖かったよな」 

 それから戸根院長は自分がされたみたいに名垣院長に対して怒りをあらわにした。

 それがとても嬉しくて、もっともっと戸根院長のことが大好きになっていった。

「熱かったよな。熱傷の跡も伊乃里の一部だ、愛おしい」

 チュッと聞こえた。きっとケロイド状になった背中にキスをしてくれたんだ。

「感覚なかった?」
「感覚はなかったですが、戸根院長の優しい気持ちとチュッって音いただきました」

「ここは?」
 すっと自然にバックハグをされて、うなじにキスされた。
「温かくて柔らかくて気持ち良いです」

 ワンピースの背中から入ってきた戸根院長の左手の指先が胸に触れ、優しく揉まれて触れるか触れないかの絶妙な手技で乳首に刺激を与えてくる。

 左手も器用だけれど、利き手の右手は羽毛のような手技で脇腹の右側を下から上へと撫で上げる。

「あっ、やん、ホックは」
「とっくに直して下まで下げたよ、気付かなかった?」
「あぁぁ」
 熱い吐息が押し殺そうにも漏れてしまう。

「脇腹が弱いんだな、軽く触れただけで可愛い声を出した」

 つつつと電気が走ったようなくすぐったいような感覚が走った。それはちょっぴり気持ち良くも感じた。

 私を抱きしめる戸根院長の二の腕を撫でたりさすったりして、男らしさと頼りがいを堪能した。

「凄く固い筋肉。戸根院長、かっこいい」

「ありがとう、誰よりも伊乃里から言われる言葉がすべて嬉しい」
 首すじを撫で上げる唇の間から器用に低くかすれた色気のある声が聞こえる。

 触れるか触れないかで手の甲で脇腹から腰骨を撫で上げるから、ぴくりとなり思わず声が漏れた。

 首すじから上げた顔は、お見通しとでも言いたげに口角が少し上がり、熱い唇が私のうなじに何度もキスを降らせる。

 待ちわびるほど夢中にさせられ、うなじにキスだけでどうにかなっちゃいそう。とにかく甘く優しく丁寧なキスにやられっぱなし。

 反応を確かめながら大きな温かい手が胸の膨らみを撫でてさすり、なめるように可愛がってくれる。

「女の子だな、ふわふわ柔らかくて気持ちが良い」

 戸根院長に触れられ撫でられ、体が反応して同時に声が吐息のように小さく途切れとぎれで漏れる。

 今までにない感覚に戸根院長の二の腕に腕を絡めた。

 息をするのを忘れてしまうほど、我を忘れ大きく息を吸い込んだ。

「すぐに乳首が固くなった、体は正直だよな」
 尾てい骨に感じる戸根院長の固くて熱いものだって正直に私をほしがっている。

「ファッションショーは後だ」
 羽のように私を抱き上げ、寝室だと言う奥の部屋へ入った。
 胸のドキドキが高鳴りながら弾む。

 後頭部に手を添えて、そっと枕に寝かしつけてくれる丁寧で優しい戸根院長と目と目が合うと、どちらからともなく唇を求め合った。

 プルルルルル。ベッドサイドテーブルの電話が鳴った。

「もっと気持ち良くしてあげたいけど、今夜はおあずけのようだ」

 唇に軽くキスをした戸根院長が電話に出てパソコンの前まで歩いて行き、子機を肩と顎にはさんでキーボードを叩いている。

「あと二十分程で来られますね、お待ちしています」
 電話を切った戸根院長がTシャツを脱ぎながら救急が来院すると言った。

「伊乃里も手伝ってくれ」
「もちろん」
 戸根院長がスクラブに着替えドクターコートを羽織りながら患畜の説明をしてくれる。

「先に行ってる」
「はい。着替えたらすぐに行きます」

 戸根院長から渡されたスクラブに着替えドクターコートを羽織り急いで院内に下りた。

 救急、手術、緊入、今夜も忙しくなるのか?