父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

「せっかくめかし込んだのに、このまま出かけなくて良いのか?」

「おめかしは戸根院長だけに見てもらえれば嬉しいんです。私の幸せです」

「可愛いな。お前さ、俺に魔法をかけたのか? 今夜の俺はやけに素直になれる」

 ドキッとさせる。だって赤信号で急に膝の上に置いた手を握ってくるから。
 守られている安心感に私も戸根院長の右手を握り返した。

 分かって。
「私はもう名垣院長の呪縛は解けました。戸根院長が守ってくれたから。だから」

「うん、心に届いたから安心しろ」
 素っ気ないんだけれど、そこにはちゃんと愛しいと想ってくれているのが分かる。

 想い人同士の心のつながりと言えば良いのか。

 とにかく戸根院長が私を愛してくれているのが手にとるように心に感じる。

 ヘッドライトは見覚えのある動物病院の看板を照らし、そのまま六階建ての病院の前を通り過ぎ、ビル地下の駐車場に入って行った。

 直接、ルームエレベーターで自宅のある六階に行ける。
 たくさんの品物を俺が持つって戸根院長がすべて持ってくれた。

「どうぞ、そこにスリッパがある」
「ありがとうございます、おじゃまします」
 玄関も廊下も広くてフローリングが滑りにくい。

「この子は?」
 廊下の壁に飾られている数々のラブの写真に目がいく。
「愛犬であり供血犬だったんだ。四年前に十六歳で亡くなった」

 どんどん部屋へ入って行く戸根院長について行くと、部屋中に戸根院長とのツーショットが飾られている。

「お名前はバレットって」
 写真立ての枠に彫ってある。

「従者やお手伝いって意味だ」
「わぁ、ラブにぴったりな名前じゃないですか。私もラブを迎えたら名付けたいなぁ」

「傷も癒えたし、そろそろ次の子を迎え入れようか。ラブの二代目バレット」

「そうしたら、会いにおじゃまします!」
「ダメだ、伊乃里、お前だけは絶対にダメだ」
 奥歯を食いしばるようにして固く拒否された。

 そこまで拒否しなくても。来たらダメなの? ならどうして部屋に入れた?