「どんな指導法で変わったのか名垣院長に指南してもらおうかな」
私の仲間や戸根院長は名垣院長と関わらないで、お願いだから。
「どうした伊乃里、青っちろい顔して。まだ全然呑んでないのによ」
「宝城、お前にはデリカシーがない」
私の心の中が分かるみたいに、卯波くんが絶妙のタイミングで宝城くんを止めてくれた。
「聡一郎、そういえば、あんたのところ新しい動物看護師入れたんでしょ、どんな感じよ」
さすがチームで働いている葉夏らしく、卯波くんのパスを受け取るようにさり気なく話題を変えてくれた。
「坂さんひとりだとキツくなってきたからな、緒花っての入れたんだよ。半人前だから、まだまだこれからだ」
「仕方ないわよね。第一、思い出してみてよ、研修医時代の私たちの存在。紗月、あんたも覚えてるでしょ?」
「もちろんよ。ある意味、病院としてもそれほど期待感はなく、給与も低い中で雑用などもこなしてくれるコマとしか思われていなかったんだから」
獣医師からは人間扱いされない無茶苦茶な使われ方をされていたからね。
『お前が男だったらなぁ、うちの科でほしかったのに』なんて差別的なことを言われることも日常茶飯事だった。
「賭けだよな。使い物になるかも分からない人間に、俺ら経営者は先行投資してんだもんな」
「俺たち教える立場の人間も勉強になっている」
久しぶりに卯波くんの低く強い抑揚のない淡白な声を聞いた。
「分からないなら分からないと聞いてくれたら良いのに聞いてこない。分からないことは放置している」
この卯波くんの声。落ち着く声なんだよね、声が良いのも得だわ。
それはともかく、なにが分からないかが分からないんだよね。厄介だけれど当事者の経験もあるし、分からないって人に教える立場も経験した。
「それ飼い主も同じことが言えるわよね。みんな、どうして分からないことを聞かないんだろう、私いつでも答えられるのに」
「葉夏もなんだね、私もそれで困っちゃった。あとから看護師に言うんだよね、私全然威圧的な態度はとっていないし言ってくれたら答えるのに」
「それ女性の飼い主に多いわね。年配の男の飼い主になると、なにかって言うと若い女じゃダメだ、男の獣医師呼べだからね。若い女だからってなめてんのよ」
「分かる! そうそう若い女医は獣医師扱いしてもらえないことがある、分かるぅ、悔しい」
「屈辱的よね」
私の仲間や戸根院長は名垣院長と関わらないで、お願いだから。
「どうした伊乃里、青っちろい顔して。まだ全然呑んでないのによ」
「宝城、お前にはデリカシーがない」
私の心の中が分かるみたいに、卯波くんが絶妙のタイミングで宝城くんを止めてくれた。
「聡一郎、そういえば、あんたのところ新しい動物看護師入れたんでしょ、どんな感じよ」
さすがチームで働いている葉夏らしく、卯波くんのパスを受け取るようにさり気なく話題を変えてくれた。
「坂さんひとりだとキツくなってきたからな、緒花っての入れたんだよ。半人前だから、まだまだこれからだ」
「仕方ないわよね。第一、思い出してみてよ、研修医時代の私たちの存在。紗月、あんたも覚えてるでしょ?」
「もちろんよ。ある意味、病院としてもそれほど期待感はなく、給与も低い中で雑用などもこなしてくれるコマとしか思われていなかったんだから」
獣医師からは人間扱いされない無茶苦茶な使われ方をされていたからね。
『お前が男だったらなぁ、うちの科でほしかったのに』なんて差別的なことを言われることも日常茶飯事だった。
「賭けだよな。使い物になるかも分からない人間に、俺ら経営者は先行投資してんだもんな」
「俺たち教える立場の人間も勉強になっている」
久しぶりに卯波くんの低く強い抑揚のない淡白な声を聞いた。
「分からないなら分からないと聞いてくれたら良いのに聞いてこない。分からないことは放置している」
この卯波くんの声。落ち着く声なんだよね、声が良いのも得だわ。
それはともかく、なにが分からないかが分からないんだよね。厄介だけれど当事者の経験もあるし、分からないって人に教える立場も経験した。
「それ飼い主も同じことが言えるわよね。みんな、どうして分からないことを聞かないんだろう、私いつでも答えられるのに」
「葉夏もなんだね、私もそれで困っちゃった。あとから看護師に言うんだよね、私全然威圧的な態度はとっていないし言ってくれたら答えるのに」
「それ女性の飼い主に多いわね。年配の男の飼い主になると、なにかって言うと若い女じゃダメだ、男の獣医師呼べだからね。若い女だからってなめてんのよ」
「分かる! そうそう若い女医は獣医師扱いしてもらえないことがある、分かるぅ、悔しい」
「屈辱的よね」



