父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

「よぉよぉよぉよぉ! 伊乃里、元気かよ。お前化粧っ気なくて大学時代と変わんねぇから、すぐに分かったよ」

「人が悪いわねぇ。ふざけないでよ、自分だってぜんぜん変わってないじゃないの」

「お前、言うようになったな」
 このテンション高めのうるさい奴。
 名は宝城 聡一郎(ほうじょう そういちろう)
 国立大学獣医学部時代の同期。

 口は人一倍悪いが長身で超絶イケメン。面倒見も良いから老若男女に好かれる明るい奴。

 爽やかな黒髪は短髪。幅の狭い愛嬌のある、くっきりした二重瞼の瞳は好奇心旺盛できらきらしている。

 優美なラインを描く筋の通った高い鼻にシワを寄せながら、いつも楽しそうに笑っていたっけね。今も獣医学部のころと変わってないや。

「Hi、紗月、変わらないからすぐに分かったわ」
「きゃあ、葉夏! 会いたかったぁ」
 さっきのハイヒールの音は葉夏だったんだ。

 葉夏は学生時代から隙きのない化粧で派手なルージュを引いていて、通学は綺麗系ファションで高いヒールで闊歩していた。

 キャンプに行くようなラフな学生の中で異彩を放つ存在だった。

 おまけにスタイル抜群で美人だから目立ちまくっていた。

 今日の葉夏は茶色がかった天然色の柔らかな髪は、軽くウェーブがかかっていておろしている。 
 
 そういえば登校時、特技の器用さを駆使して色々なヘアアレンジをして来て、いつも楽しませてもらったっけな。

「あれ? もしかして二人共、私と気付いて尾行してた(つけてた)?」

「ビンゴ、声色変えたからビビってやんの、なっ?」
「なっ、じゃない、くっだらない」
「こういうバカやるの聡一郎しかいないわよ、昔っからバカ」

 葉夏の心身は根っからの体育会系で男まさりだから、バカとか言っても嫌味がない。

「あっ」
 にぎやかな二人のうしろに、本人が目立ちたくなくても目立ってしまう彼が立っている。

「伊乃里も矢神と同じ反応じゃん、こいつ相変わらずきれいだろ?」 

卯波(うなみ)くん......」 
「伊乃里、お前なぁ、俺んときと反応違うじゃないかよ」

 長身に似合う持て余す手足、サラサラした茶色い髪と瞳は天然。 

 小鼻には余計な肉がなく、筋のつんと通った鼻筋。目を見張る美形。

 学内では同期どころか先輩後輩たちからも、優雅な所作とこの世のものとは思えないオーラを放つ目を見張る美形とが相まってイケメン貴公子と呼ばれていた卯波くん。 

「相変わらず息を飲む美しさ。凄く凄く美しい」
「だから昔から言ってんじゃん、俺が美しくて卯波はきれいなんだよ」
 ホント、この人バカ。