父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています

 戸根院長が腹部に数ヵ所、とても小さな穴を開ける。

 開け終わった戸根院長に鉗子などを体内に挿入するための器具を、戸根院長の手もとのステンレスバットに置いた。

「ありがとう、取りやすい位置だ」
 出来るなら私が代わりたいくらい。開いて取り出すのって楽しいのよ。

 戸根院長が器具を挿入して炭酸ガスを注入する。通路の役割を果たす器具だから、これは注入しやすくて本当に便利。

 お腹にスペースが出来たところでビデオカメラを渡した。

 バイタルサインを把握しながら、穴から挿入して観察する戸根院長の手もととモニターに目を配らせる。

 今のよりさらに細い管を数本、ステンレスバットに置いた。

 戸根院長は細い管を一本ずつ、穴からゴム付きの鉗子類を体内に挿入する。

「サイズバッチリだ。お前消化器外科だけあるな、さすがだ」
「当然です」

 ビデオカメラで映し出された腹腔内の様子を、モニターで異物を探して確認しながらおこなう戸根院長。
「きれいな食道だ」

「開腹手術と違って、じかに手で内臓に触れて手術が出来ないので高度なテクニックが要求されますよね」
 そこがたまらない快感。

「戸根院長もさすがですね」

「たまたまフィオナは空腹時だった。消化管内の観察と摘出がやりやすいだけだ、食べさせてなかっただけありがたい」

 私は褒められると前へ前へ出るのに、戸根院長は謙遜する。

 羽吹と名垣のセンターで数多く内視鏡の臨床を見てきたけれど、自信に満ち溢れた戸根院長の繊細且つ大胆な手付きを見ていると技術的なセンスがあると思う。

「戸根院長は脳神経外科なだけあって細かな点に、よく気付かれます。それにスピードがありながらも正確性も高い技術が勉強になります」

「脳における救急患畜は一分一秒でも早い発見と治療が重要だから、異変にも早く気付く必要がある。正確さとスピードが大切だ」

「フィオナは飼い主が心配するほど重篤じゃないてすもんね。ひとつの見落としで落ちる(死ぬ)可能性は低いです」

「脳はひとつの見落としで重い後遺症も残るから気が抜けない。フィオナとて油断は禁物だ」 
「もちろん」

 戸根院長も、今まで積極的に知識を得て畑違いの医療技術の向上にまで全力を注ぎ、努力してきたんでしょうね。

 そしたら自然にスキルもアップしていく。

「あったぞ。フィオナ、丸飲みしている」
 戸根院長が愛しそうに小さな笑い声を上げる。