傾国の貴妃

「逆らうだなんて、そんな…」


「いいから、去れ。目障りだと言っているんだ」


エリザベート様の言葉を遮るかのように、ギルの声が響く。

その言葉に目を見開いたのは、エリザベート様だけではなかった。

この国では国王の言葉が絶対。

しかし、多数の邑により成り立っているこの国は、国と邑の相互の関係もとても重要で。

サマルハーンのような大国は、国王と謂えども軽くは扱えない存在。

そこの姫君に対して、目障りだと言って退けるギル。

エリザベート様は悔しそうに強く唇を噛み、その美しい唇からは赤い鮮血が滲み出ているほどだった。


「…そのお言葉、お父様にご報告させていただきますわ」