傾国の貴妃

広く長い廊下。

高く響くその声に思わず足を止めた。

向こう側から歩いてくるのは、ギルとエリザベート様。


「私、陛下に一生を捧げることも厭いませんわ。それともサマルハーンに何かご不満でも?」


かなり切迫した雰囲気に隠れ場所を探すも時既に遅し。

向こうから歩いてくる二人とかち合わせてしまうことを避けられるはずもなかった。

身分の低い私は、2人のために道をあけるのが常。

端に寄り、頭を下げ通り過ぎるのを待つしかない。

シンシアと二人気まずさを隠し頭を下げた。

足音が近い。

聞こえるのは、エリザベート様の声だけ。

ギルは何も言わずにそれを聞き流しているようだった。