時雨の手が私の髪をそっと撫でた。
その一つ一つの動作が、まるで「大切だ」と言っているように思えて。
「……私は」
“私も好き”と、言葉にすれば簡単なのに。
その一言を口にするのが、怖くて喉の奥で止まる。
言ってしまったら、もう戻れない気がした。
時雨は私の表情から全てを読み取っているみたいに、穏やかに微笑む。
時雨「レイが待って欲しいなら、いくらでも待つ」
「……待たないでって言ったら?」
時雨「それでも、待つよ。俺には、お前だけだから」
時雨は優しい。
それは甘南が言っていた通り、誰にとでもいうわけではないくらい態度で示してくれる。
だから余計に、その優しさが怖い。
甘えてしまいそうで。
時雨はどんな形であれ、私を受け入れてくれるだろう。
時雨「いくらでも待つけど、他の男によそ見するならお仕置きするからな」
「っ……」
首筋をいやらしく撫で、反応する私を見ては心底、楽しそうにしている時雨を睨むが効果は全くない。
「……いじわる、しないで」
そう呟くと、時雨は静かに笑い、私の頬を指先で撫でた。
時雨「お前が可愛すぎるから悪い」
恥ずかしげもなく言い切る時雨に、呆れと同時に、どうしようもない愛おしさが込み上げてくる。
時雨「レイ」
その名前を呼ぶ声だけで、心が全部ほどけていく。
その瞳に映る、私は時雨を拒絶できない。
