灼熱の砂浜。
陽光が突き刺すように降り注ぎ、潮の匂いと焼けた砂の熱気が混じり合う。
キラキラと反射する海面と、騒がしいほどの人の声。
……正直、うるさい。
なぜ、こんな陽キャが群れる地獄みたいな場所にいるのかというと――
「お嬢、手ぇ止まってますよ」
「あ、ごめん」
慌てて、くるりとたこ焼きをひっくり返す。
目の前には鉄製のプレート、そして焼けるソースの匂い。
鉄(てつ)――朝倉組の料理担当で、年が近い鉄とはそれなりに仲がいい。
数年前に何度か仕事を手伝ってもらったことがあり、その礼にと軽く引き受けたのが運の尽き。
……まさか、ここまで忙しいとは思わなかった。
行列は途切れず、汗が額を伝う。
なのに、客の視線はたこ焼きではなく、店の脇で仏頂面をして座っている男へ向けられている。
「……何あれ、王子様みたい」
「ヤバ、かっこよくない?」
そんな声がそこかしこから聞こえてくる。
鉄「若、相変わらずモテますねぇ笑」
そう。
原因は、こいつ――朝倉組の若頭、朝倉月夜。
手伝いに来たというより、ただ座ってるだけの観賞用。
しかもそのせいで、店の前はまるでアイドルの出待ち状態。
何故かついてきた月夜は手伝う気は一切ないようでつまらなさそうにしている。
「あんた、手伝う気がないならどっか行ってよ。女ばかりでうるさいわ」
月夜はめんどくさそうに顔を上げて、薄く笑う。
鉄「……お嬢の美貌で男もいっぱいきてますけど」
そんな鉄の声は私には届かず、暑さでイライラしている私は月夜に当たり散らかす。
月夜「あ?こんなむさ苦しい男どもにお前任せられっか」
「いいから、どっか行ってて。ただでさえ暑いのに余計暑くなる」
そう若衆を睨んで威嚇する月夜を追い出し、たこ焼きを焼いてはまた焼いての繰り返し。
鉄「お嬢だけっすよ。若にあんな口が聞けるの」
鉄「お嬢だけっすよ。若にそんな口が聞けるの」
「そうなの?」
鉄「ええ。若衆の中じゃ“笑ってるときほど怖い”って言われてて。俺なんか、お嬢と話してるだけで睨まれますよ、マジで」
「短気って損だよね」
鉄「……鈍感だなぁ笑」
鉄は苦笑しながらも、手際よくソースを塗っていく。
