季節はずれの桜の下で


 きのうは突然うちにやってきて、あんな手紙を渡して、わたしのことを教室で待ってるなんて言ってたくせに。 

 靴箱の前で思いがけなくわたしに会って、大和くんも動揺してるのかもしれない。

 そう思ったら、ちょっと笑えるというか……。気持ちがほぐれる。 

 前までは、朝から昇降口で出会ったら固まっちゃってたけど……。これまでほどは、大和くんのことが怖くない。

 だから、緊張するけど、がんばって口を開いた。

「……お、おはよう……」

 ドキドキしながら、ほとんどささやきに近い声であいさつしたら、大和くんがおどろいたように目を見開く。

 それから。

「おはよ、心桜」

 わたしの名前を呼んだ大和くんが、ちょっと泣きそうに笑ってくれた。