「僕」なんて、いつも上から目線な話し方をする大和くんらしくない。
『人前でうまく話せない幼なじみが、僕にはいつも困っているように見えていました。だから、顔を合わせば話しかけていたし、ひとりでいたら強引に仲間に入れたりしていました。
だけど、僕は最近、自分が何気なく言った言葉が幼なじみを傷付けていたことを知りました。それから、幼なじみが人前でうまく話せなくなった原因が僕にあったことも……。
幼稚園の頃からいっしょだったのに、僕は幼なじみが自分を怖がっていたことに少しも気付いていませんでした。むしろ、自分は幼なじみの役に立っていると思ってて……。心桜の本音を知って、自分がどれだけ独りよがりだったかを思い知らされて恥ずかしくなった……』
ずっと、「幼なじみ」と書いていた作文に、途中からわたしの名前が出てくる。
そのあたりからもう、大和くんの作文のスタイルは崩れ始めていて、わたしへの手紙みたいになっていた。
『小学校の参観日のとき、おれが余計なこと言わなかったら……。すぐに謝ってたら、心桜はもっとふつうに話せるようになってたのかな。
あいつみたいに、おれのことも友達って思ってもらえたのかな。
小学校のときの言葉に、悪気はなかった。心桜の声が聞けたことにびっくりしたし、ちょっとうれしくて、思ったことが声に出た。からかったつもりも、バカにしたつもりもなかった。
でも……、おれの言葉が心桜を傷つけたならほんとうにごめん。今さら遅いかもしれないけど、それでもごめんなさい。
あのときの言葉は取り消せないし、心桜はおれのことなんて嫌いかもしれない。
だけど、おれは話すのが苦手な心桜のことずっと気にかけて見てたよ。そのことだけは知っててほしい。』



