季節はずれの桜の下で


「そんなキツい言い方したら、また心桜に怖がられるよ〜」

 ハルちゃんが呆れ顔でそう言われて、大和くんがハッとしたように口を押さえる。

 それからわたしが怯えていないのを確認すると、大和くんが真っ直ぐにわたしを見つめて言った。

「心桜、明日は学校来いよ。あいつはもういないかもしれないけど……、おれは心桜のこと待ってるから。教室で」

 いつもより真面目な大和くんの言葉に、いつになくドキッとする。

 無言のままなんの反応もできずにいると、大和くんが「じゃあな」と手を振って行ってしまった。

「ひとつだけ、大和のウラ話していい?」

 大和くんが帰ったあと、ハルちゃんがふふっと笑う。

「ん?」と首をかしげたわたしに、ハルちゃんがナイショ話するみたいに口元に手をあてた。

「いつも自信満々で、自分が世界の中心みたいな大和がさ、今日は朝からすっごい落ち込んでた。心桜に言われたことが、だいぶメンタルにきてたっぽい」

 そう、なんだ……。

 たしかに、あの大和くんが桜介くんのことで謝ってくるぐらいだもんね。わたしは、まだ少しびっくりしてる。

「伝え方はともかく……、大和も大和なりに心桜のこと気にかけてたんだと思う。だから、できたら手紙も読んであげなよ」

 ハルちゃんに言われて封筒に視線を落とすと、わたしは小さくうなずいた。