「うちの学校、来年の春に創立五十周年なんだって。それで、全校生から『想いを伝える』ってテーマの作文を集めて、記念の文集を作るらしい。今日、国語の授業のときにうちのクラスでも作文書かされた」
何を言われても大丈夫なように身構えていたわたしに、大和くんはそんな話をし始めた。
いきなり、なんの話……?
困惑していると、大和くんがわたしに白い封筒を差し出してきた。
「作文のテーマを言われたときに、おれが何か伝えたいって思った相手は心桜だった。授業中に一気に書いて、そのまま提出しようかと思ったんだけど……。提出用は別の内容で書き直した。やっぱり、これは心桜だけに読んでほしいと思って」
わたしが封筒を見つめてぽかんとしていると、大和くんがズボンのポケットがら何かを取り出す。そうして、封筒といっしょに、それを強引にわたしの手に押し付けてきた。
「それ、ずっと渡しそびれてた校外学習のお土産……」
大和くんに渡されたのは、小さな鈴がついたピンク色のお守りだ。
「あいつのこと……。心桜が友達だって言ってんのに、取り憑かれてるとかお祓いしろとか、嫌なこと言って悪かった……」
ぼそっと謝ってきた大和くんにびっくりして顔をあげる。
大和くんに初めて謝られた……、かも。
じっと見つめると、大和くんがふいっと顔をそらす。
「そんな目で見んな……!」
怒った声でいう大和くんは、たぶんちょっと照れている。



