季節はずれの桜の下で


「それとね、心桜。ちょっとだけ話したいことがあるんだけど……。少し外に出れないかな」

 外……? 家では話せないことなのかな。

「ちょっとだけでいいから」

 ハルちゃんに頼まれて、靴を履いて外に出る。そうしてすぐに、わたしはしかめっ面でハルちゃんを見た。

 なんで、っていう、少し裏切られたみたいな気持ちだった。

 家の前に、大和くんがいたのだ。

 くるり、回れ右して家の中に逃げようとすると、

「待って、心桜」

 ハルちゃんがわたしを引き止める。

「ごめん。大和が来てるって言ったら、心桜は絶対外に出てきてくれないと思ったから……」

 気まずそうなハルちゃんの顔。それを見つめ返して困っていると、大和くんがわたし達のほうに近付いてきた。

「おれがハルに無理言ったんだ。心桜と話したかったから」

 そんなこと言われても、わたしには大和くんと話すことなんてないんだけどな……。

 大和くんは、わたしがまだ桜介くんに取り憑かれていると勘違いしているのかな。

 もしくは、きのう、わたしがキツい言葉をぶつけたことを怒っていて、文句を言いにきたのかも……。

 大和くんに伝えた言葉が少しキツかったかもという自覚はあるけど……。全部わたしの本音だから訂正するつもりはない。

 だけど……。