お母さんの話を聞いた私は、桜の木の下で桜介くんに出会った日のことを話した。
それから、みさとちゃんたちからいやがらせを受けたことや、そのせいで教室に行くのが怖くなったわたしを桜介くんが励ましてくれたこと。そして、なぜか学校にいても、桜介くんの前だけでは自然と声が出せたことも。
「心桜は、ほんとうに桜介に会ったのね……」
わたしの話を聞き終えたあと、おかあさんは桜介くんの写真を見ながらつぶやく。それから、
「ごめんね、心桜。おかあさん、桜介がつらい思いをしてたときも、心桜がつらい思いしてたときも何もできなかった。でも……、桜介が心桜のことを助けてくれたんだよね」
おかあさんはわたしの前で、目元を押さえて静かに泣いた。
もしかしたらだけど……。わたしが桜介くんの前で自然と声が出せたのは、彼がおかあさんの弟だったからなのかな。
桜介くんは家族に近い人だったから、わたしは自然体でいられたのかもしれない。
やっぱり、わたしが桜介くんと出会えたことは、ただの偶然なんかじゃなかった。
季節はずれに花を咲かせた桜の木は、わたしと桜介くんを運命的にめぐり合わせてくれたんだ。



