季節はずれの桜の下で


《校外学習に行かなかったのも、みさとちゃんたちにいやがらせされたのも、全部大和くんがわたしにかまうから。これからは、わたしのことはほっといて》

 最後のほうは、少し八つ当たりの気持ちも混ざっていたかもしれない。

 目に涙を浮かべながらスマホで打ったわたしの言葉。それを全部読んだ大和くんは、なぜかすごく悲しそうに目を伏せた。

「……心桜、ずっとそんなふうに思ってたんだ」

 桜介くんがいなくなって、大切な居場所も無くなって、悲しいのはわたしのほうなのに。どうして大和くんが傷付いた顔をするのか、わからない。

 ずっと言えなかったことを伝えられたのに……。

 大和くんが泣きそうな顔をするから、全然気持ちがスッキリしない。

 複雑な気持ちで大和くんを見ていると、やがて、電動ノコギリの音が止まる。

 わたし達の目の前で、桜の木がゆっくりと地面に倒れていく。

 ああ、これでもう、ほんとうに桜介くんには会えないんだ……。

 そう思ったら、また涙が込み上げてきそうになる。

 地面に横たわる桜の木をぼんやり見つめていると、カバンを持ったハルちゃんが校庭に走ってきた。

「どうしたの、ふたりとも……」

 泣き顔のわたしと暗い表情の大和くんを見たハルちゃんが、目を瞬かせる。

「べつに。ハル、心桜のこと家まで送ってやってくれる?」

「それはもちろん、送るけど……。これ、どういう状況……?」

「じゃあ、おれ帰るし。よろしく」

 ハルちゃんの質問には答えず、大和くんがわたしから離れる。