「桜介ってさっきの幽霊のことだよな。名前なんかで呼んで、友達かよ」
《そうだよ》
「そうだよ、ってどういう意味? 幽霊と友達とかありえないだろ。ていうか、心桜、さっきあいつとふつうにしゃべってたよな? おれとはちゃんと話さないのに、なんで幽霊とは話せんの? そんなん、おかしいだろ」
わたしを見下ろして、強い口調で責めてくる大和くんが怖い。でも、桜介くんのことを否定されるのだけは嫌だった。
たとえ幽霊でも、桜介くんはわたしの友達。大和くんやほかのみんななんかよりもよっぽど、わたしの気持ちをわかってくれる。
《桜介くんは大切な友達。わたしはずっと、桜介くんといっしょにいたかった》
わたしの言葉を読んだ大和くんが、「は?」と低い声をもらす。
「なんだよ、それ。やっぱり心桜、取り憑かれてんじゃん。おれは、教室で話せない心桜のことをいつもかばってやってんのに。幽霊とずっといっしょにいたいとか、意味わかんないんだけど。早く帰って、お祓い連れてってもらえよ。おれも、付き添ってやるし」
わたしがなにを言っても、大和くんは上から目線の態度を崩さない。
わたしはそれをずっと怖いと思って怯えてだけど……。今は、大和くんにすごく腹が立った。
《わたし、大和くんにかばってほしいなんて思ったこと一度もない》
わたしの言葉を読んだ大和くんが、不快げに眉根を寄せる。
今までだったら、その表情を見れば怖くて震えてた。文字ですら大和くんには伝えられずに、ほんとうの気持ちを心の中に押し込めてきた。
でも……。今なら言える。
《大和くんは口調がきつくて、声も大きくて怖い。小学校のときからずっと》
「……え?」
《大和くんに話しかけられると、わたしは怖くて、いつも震えてしまう。よけいに声が出せなくなる。もともと人前で話すのは苦手だったけど、それが特に怖くなったのは、小学校のときの参観日で大和くんがからかったから》
「からかった覚えないけど……」
《わたしは覚えてる。わたしは発表がんばったのに……。心桜がしゃべった、って、わたしのことみんなの前でバカにした》
わたしの言葉を読むにつれて、大和くんの表情が少しずつ変わっていく。



