季節はずれの桜の下で


 どうしよう。はずかしい……。はずかしい……。

 がんばって変わろうって。必死に声を出したのに……。

 おとうさんやおかあさんがたくさん見にきている参観日で、こんなからかい方ひどい。

 やっぱり、いつもみたいに何も話さずにいればよかった。

 肩を縮こめて小さくなるわたしに、先生がなにかフォローの言葉を言ってくれたように思う。だけど、恥ずかしさでいっぱいのわたしの耳に、先生の言葉は入ってこない。

 そのあとは、参観日が終わるまで、ずっと顔の熱が冷めなかった。心臓がきゅー、きゅーと痛くて、早く家に帰りたくてしかたなかった。

 その日以来、わたしはますます教室で声が出せなくなった。がんばらなきゃ、って思いすぎると、今度は頭やお腹が痛くなった。

 心配したおかあさんは、わたしの症状の原因をいろいろ調べてくれた。

「心桜みたいに、学校とか、特定の環境で緊張してお話できなくなる症状のことを『場面緘黙(ばめんかんもく)っていうんだって。心桜は小さいときからいろんなことに対して不安が強くて、人見知りで緊張しやすい子だったもんね。学校にいるときに心桜の気持ちがリラックスできるようになったら、ちょっとずつお話できるようになると思う。だから、あせらなくていいよ」

 参観日のあとから、暗い顔をして学校から帰ってくるようになったわたしに、おかあさんはそう言ってくれた。

 だけど、結局少しも話せるようにならないまま、わたしは小学校を卒業し、地元の中学校へと進学した。