季節はずれの桜の下で


「桜介くんの家、犬飼ってるの?」

「そうだよ。おれが出かけるとき、いつも玄関までお見送りしてくれてめっちゃかわいい」

「へえ、いいなあ……」

「次、心桜ちゃんだよ」

「あ、うん。えーっと、じゃあ……。わたしは、ハルちゃんと遊ぶこと」

「ハルちゃんって、心桜ちゃんの友達?」

「そう。幼稚園のときからずっといっしょで、やさしいの」

「そっか。いいなあ」

「次、桜介くん」

「じゃあ……、学校に着くまでの信号全部青だったとき」

「お弁当にお母さんの手作りハンバーグが入ってた」

「部屋でダラダラしながらゲームしてるとき」

「本を読むこと」

「楽しみにしてたマンガの最新刊を手に入れたとき」

「動物の癒し動画を見ること」

 桜介くんと交代に楽しいことやうれしいことを言っているうちに、悲しい気持ちや不安な気持ちが少しずつ消えていく。

 それに、桜介くんの好きなこともいろいろわかって、わたしは余計にうれしい気持ちになった。