そっか。桜介くんもさびしいんだ。だって、いつもここにひとりでいるもんね。
クラスメートをかばったらいやがらせされるようになって、クラスになじめない。教室に行けない。
桜介くんが悪いわけじゃないのに、きっとわたしみたいに理不尽なかなしい思いをして、傷付けられたんだ。
桜介くんは、わたしと同じ――。
だから、わたしは桜介くんが気になる。
桜介くんだけが、わたしをわかってくれる。これからもずっと、桜介くんといられればそれでいい。
柵に足をかけて向こう側へと乗り越えると、桜介くんがメガネの奥の目を少し細める。
「いらっしゃい、心桜ちゃん。あっちで座って話しながら、少しだけ休もうか」
桜介くんの言葉にうなずくと、彼の後ろをついて歩いて、桜の木の根元に腰かける。きのうの雨で地面はまだ少し濡れていたけど、盛り上がった木の根元は乾いている。
そうやって桜介くんと並んで座る頃には、涙はすっかり止まって気持ちも落ち着いていた。
「あのね、桜介くん。わたしがいやがらせされた理由がわかったよ。すごく……、すごくくだらない理由だった……」
「いやがらせされる理由なんて、だいたいくだらないものなんだよ。受けたほうは、人生終わらせたくなっちゃうくらい傷付くこともあるのにね……」
桜介くんが、眉根を寄せて苦笑いする。
わたしは、桜介くんの言葉に同意するようにうなずいた。
やっぱり、桜介くんはわたしと同じだ。



