季節はずれの桜の下で


 なんとか頑張って、少しでも声を出さなくちゃ。

 自分の発言の順番が回ってくる度、何か言わなきゃっていつも思う。頭の中で話す言葉を考えて、声に出して話すところをくりかえしイメージする。

 だけど……。いざ話さなければいけない状況になると、やっぱりうまく声が出せない。

 小学校の先生も、わたしが話すのが苦手だということを知っていて、わたしが黙り込んでうつむくと、「じゃあ、次にまた挑戦してみよう」と、やさしくフォローをしてくれた。

 でも、声が出せないわたしを見るクラスメートたちの目は、幼稚園の頃ほどやさしくはなかった。

 なんであの子は話さないんだろう。

 わたしが黙り込む度、クラスメートたちからの無言の視線を感じた。無数の視線がチクチクと全身を突き刺してして、胸がドキドキしたし、手のひらにすごく汗をかいた。

 湿った手を握りしめながら、小学生になったばかりのわたしは、なんとかしなきゃとそればかり考えて焦っていた。

 小学校に入って一ヶ月くらい経ったとき、初めての参観日があった。

 生活の授業で、「小学校で発見したこと」をクラス全員がひとつずつ発表するっていうのがテーマだった。

 参観日にはおかあさんが来てくれることになっていた。

 だから、いつもはうまくしゃべれないけど、参観日の発表はがんばろうと思った。

 何日も前から話すことを考えて、学校の登下校中やおふろの中、寝る前のふとんの中で、すらすら言葉が言えるように何度も何度も練習した。