季節はずれの桜の下で


「地味な嫌がらせしても心桜ちゃんには効果ないみたいだから、はっきり言うね。声が出せないフリしたり、授業サボったりして大和の気を引こうとするのはやめてくれない? 心桜ちゃんが迷惑ばっかりかけるから、大和困ってるよ」

 みさとちゃんの言葉に、一瞬思考が固まる。

 みさとちゃんがなにを言っているのか、わたしには全くわからなかった。

 わたしが声を出せないのは、大和くんの気を引くためなんかじゃない。

 わたしが話せないことで、大和くんに迷惑がかかったことなんてない。

 それなのに、わたしが大和くんを困らせているだなんて、ひどい言いがかりだ。

 みさとちゃんたちに反論したくて口を開く。

 だけど、いざ思っていることを声に出そうとすると、喉が詰まってうまく言えない。

 唇が少し震えるだけで、わたしの言葉は声にはならない。

「心桜ちゃん、あたしと大和、一年のときも同じクラスですごい仲良かったんだよ」

「そう。付き合ってるってウワサされてたよね」

「うん。でも二年になって心桜ちゃんと同じクラスになったら、大和は心桜ちゃんばっかりになった。大和と一番仲良かったのは、あたしだったのに……」

 なにも言えないわたしを、みさとちゃんと綾香ちゃんが言葉で責めてくる。

「ねえ、心桜ちゃん。なんでなにも言わないの? 心桜ちゃんて、話さないだけで本当は声出るんでしょう。昔はたまに声出してたんだよね? だったら、言ってくれない? 『大和には近付きません』って」

 話を聞くうちに、ちょっとずつだけど、わたしがみさとちゃんに悪意を向けられた理由がわかってきた。