季節はずれの桜の下で


 みさとちゃんと綾香ちゃんの間に挟まれたわたしは、人の少ない非常階段の近くまで連れて行かれた。

 非常用扉を背にして立たされたわたしの前に、みさとちゃんと綾香ちゃんがふたりして並ぶ。

 なにを言われるんだろう……。

 ふたりからの圧の強い視線に怯えるわたしを見て、みさとちゃんが腕組みしながら、ふんっと鼻で笑う。

「心桜ちゃんの、そういう『困ってます』って顔、ほんとうにムカつくんだよね」

 みさとちゃんが、嫌味っぽい言い方をする。

 そんなこと言われても……。わたしには、今自分がどんな顔をしているのかわからない。

 ただわかるのは、みさとちゃんから悪意を向けられてるっていうことだけだ。

 どんな反応をすればいいのかわからなくて目を伏せると、みさとちゃんが一歩、わたしのほうに近付いてきた。

 下を向いたままビクッと肩を震わせると、みさとちゃんが「はあーっ」とため息を吐く。

「ただ話してるだけなんだから、いちいちビクビクしないでよ。何かにつけてそんな態度だから、大和が心桜ちゃんのことかまうんじゃん。綾香もそう思うよね」

「うーん、そうだね」

 みさとちゃんに同意を求められた綾香ちゃんが、ははっと笑う。

 なんで、ここで大和くんが出てくるんだろう。

 不思議に思って視線をあげると、冷たい表情のみさとちゃんと目が合った。