次の日の朝。一緒に登校したハルちゃんが、わたしの教室までついてきた。
きのうは、わたしがハルちゃんと別れたあとにこっそり桜の木の下に行ったから心配されているみたい。
「あたしは大和みたいに桜の木の下に行っちゃダメとは言わない。だけど、行くなら授業をサボるんじゃなくて休み時間にするんだよ」
ハルちゃんに言われて、小さくうなずく。
たしかに、ハルちゃんの言うとおりだよね。
わたしが校外学習以来、ときどき授業を抜け出していることは先生たちの間でも心配されていたみたい。
きのうの夕方、担任の先生から家に電話があって、お母さんにもちょっと心配された。
「じゃあ、帰りにね」
そう言って手を振るハルちゃんに、わたしも手を振り返す。
桜介くんに会いに行けるのは、昼休みかな……。
そんなことを思いながら教室に足を踏み入れると、みさとちゃんと綾香ちゃんがわたしの前に進み出てきた。
ドキッとして一歩後ずさるわたしを、みさとちゃんが少し睨んでくる。
「心桜ちゃん、ちょっと話があるんだけど」
話って、なんだろう。どう考えても、嫌な予感しかしない。
でも、わたしには、みさとちゃんたちの言葉を無視する勇気がなかった。
みさとちゃんたちも、声を出せないわたしが、断れないことをわかっているみたいだ。
「ちょっと来て」
みさとちゃんが、顎をクイッと動かして、教室の外に出るようにわたしをうながす。



