季節はずれの桜の下で


 わたしが体育館横の更衣室で着替えて外に出ると、その横の女子トイレからみさとちゃんと綾香ちゃんが出てきた。
 
 クスクス笑いながらトイレから出てきたふたりは、わたしに気付くと「え?」と、少し驚いたような顔をする。

 だけどすぐに、わたしから目をそらして、ふたりで女子更衣室のほうに歩いて行った。

「体育、出るんじゃん」
「村沢さんに体育着借りたんだね」

 去っていくふたりの話が少し聞こえてきて、心臓がドクンと音をたてる。

 まさか……。

 悪い予感に駆られて女子トイレに飛び込んだわたしは、洗面台のそばのゴミ箱の中に放り込まれた体育着を見つけた。

 震える手でそれを拾うと、やっぱり……。わたしのものだった。

 体育着をとって捨てたのは、きっと、みさとちゃん達。上履きを隠したのも――?

 胸がざわざわして、身体が震える。

 今まで、話せないことで、クラスメート達から心ないことを言われることはあったけど、こんなふうにあからさまな嫌がらせをされたことはなかった。

 それなのに、どうしてみさとちゃん達は急にこんなこと……。

 トイレから出たわたしは、捨てられていた体育着を持ってしばらく茫然としていた。

 これ、どうしよう……。

 トイレのゴミ箱に捨てられていた体育着は、汚れてしまって少し臭い。

 とりあえず、更衣室に置いてくる……?

 でも、更衣室にはさっき入れ違いで入っていったみさとちゃん達がいる。