季節はずれの桜の下で

 どっちがいいか、ただ選ぶだけなのに。

 女子はみんな水族館を選んでるから、そっちに合わせたらいいかな。

 でも、女子の意見に合わせたら、大和くんににらまれそうでこわいな。

 周りがどう思うか。それを考えたら、胸がドキドキして、喉に何かがつっかえる感じがして、うまく声が出せない。

 それに、今みたいにみんなに注目されると、余計に緊張してしまう。

 ひざの上に置いた手をぎゅっと握りしめてうつむくと、班のメンバーの誰かが、「はあーっ」ってため息を吐いた。

 やっぱり、しゃべらないよね。

 声には出さないけど、みんながそう思っているのが雰囲気で伝わってくる。

「じゃあ、もう一回全員で多数決しない?」

 大和くんが仕切り直して言うと、「えー?」とみさとちゃんが不満そうに顔をしかめる。

「四人じゃ、多数決にならないでしょ」

「いいから、いいから。水族館に行きたい人〜」

 大和くんの呼びかけに、みさとちゃんと綾香ちゃんが顔を見合わせてちょっと面倒くさそうに手をあげる。

「じゃあ、次。洞窟探検したい人〜」

 大和くんはそう言うと、左手をあげながら、右手でわたしの手をつかんだ。それをムリやり上へとひっぱりながら、「はーい!」と、ちょっと高い裏声を出す。