季節はずれの桜の下で


 やだなあ。胸がチクチクするし、この空気を作った原因がわたしにあると思うと、落ち着かない。

 ここから、今すぐ逃げちゃいたい……。

「なんか、みさと、今日機嫌悪いな。グループワークの課題なんだから、みんなで協力すればいいじゃん。とりあえず、心桜は発表までにスライドまとめとけばいいから」

 肩身の狭い思いでうつむくわたしに、大和くんが言う。

「なにそれ。悪いの、あたし?」

 みさとちゃんの不機嫌な声が耳に届く。その言葉を、大和くんは聞いてないフリでスルーする。

 大和くんに無視されたみさとちゃんが、当てつけみたいにじろっとわたしを見てくる。

 やだなあ。やっぱり、今すぐ逃げ出したい……。

 こんなときは、一刻も早く透明な空気にならなくちゃ。

 だけど、そんなときに限って、大和くんがやたらとわたしに話しかけてくる。

 結局わたしは、いつものように上手に透明な空気になりきれず……。

 六時間目終了のチャイムが鳴ったときには、心がぐったりと疲れ切っていた。