季節はずれの桜の下で


「――ろ」

 ぼんやり考えていると、

「心桜、聞いてるか?」

 大和くんが、わたしの顔の前でパパッと手を振ってきた。

 しまった。なにも聞いてなかった……。

 気まずくて少し目をそらすと、大和くんがわかりやすくため息をつく。

「校外学習には不参加でも、心桜もこのグループのメンバーだろ。話くらいは聞いとけよな」

 もっともらしく、上から目線な物言いをする大和くん。その言葉に小さくうなずくと、彼が机の真ん中に置いてあったタブレットをわたしのほうに寄せた。

「心桜は発表できないから、スライドのページ作るの手伝えよ。心桜がまとめるのはこの寺と鎌倉大仏の情報とスライド二ページ分。これ、もらってきたパンフ。写真も、おれたちが撮ってきたデータ使っていいから。なにかわかんないことがあったら、おれに聞いて」

 大和くんが、タブレットをわたしに見せながら、てきぱきと指示してくる。

 物言いはエラそうだけど、小学生の頃から、大和くんにはリーダーシップをとってグループを引っ張っていく力がある。

 大和くんの話をおとなしく聞いていると、ふと、みさとちゃんの視線を感じた。

 目が合うと、みさとちゃんがわたしのことを睨んでくる。

 わたし、なにか嫌がられるようなことしたかな……。