季節はずれの桜の下で


 バンッ――。

 校外学習の次の日。いつものように席に座ると、目の前で急に大きな音がした。

 机の上には、わたしよりもひとまわりくらい大きな手。その手が、思いきり机を叩きつけたのだ。

 びっくりして顔をあげると、大和くんが怖い顔でわたしを見下ろしている。

 超絶不機嫌そうな大和くんににらみつけられて、わたしはおもわず震え上がった。

 な、なに……?

 おそろしさに心臓がドコドコ鳴って、身体が硬直してしまう。膝の上で小さく震える手をぎゅっと握りしめた、そのとき。

「なんで来なかったんだよ。昨日の校外学習。休んだ理由、風邪じゃないよな?」

 大和くんが低い声で尋ねてきた。

 なんでバレてるんだろう。先生から聞いたのかな……。

 気まずくて目をそらすと、大和くんが「はあーっ」と深いため息を吐く。

「心桜がひとりで困んないように、せっかくおれが同じ班になってやったのに」

 大和くんは苦手だし、わたしをにらむ不機嫌な顔も怖い。だけど……。

 大和くんの上から目線な物言いに、わたしは少しムカッとする。

 同じ班になってやった? わたしが困らないように?

 わたしは、大和くんと同じ班だったから。だから、校外学習に行かなかったんだ。

 わたしの本音を大和くんに直接言うことはできない。だけど、自分が正しいって勝手に勘違いしている大和くんにモヤモヤした。