季節はずれの桜の下で


 なぜか、理由もわからないけど、そうしないといけないような気がした。

「ま、待って。あなたの名前は?」

「桜介」

「桜介、先輩」

 教えてもらった名前を小さく復唱すると、彼がふっと目を細めた。

「桜介でいいよ」

「桜介、くん……」

「うん。きみは?」

「こ、心桜……。夏目 心桜」

「心桜ちゃん……。また会えるといいね」

 わたしの名前を呼んでふわっと笑うと、桜介くんは手を振って歩いて行った。